選考委員 | 中原慎一郎(ランドスケーププロダクツ ファウンダー、株式会社コンランショップ・ジャパン 代表、インテリア&プロダクトデザイナー) |
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島田昭彦(京都伝統文化プロデューサー、京都芸術大学講師) | |
小仲正克(株式会社日本香堂ホールディングス代表) | |
山田昌彦(株式会社香十天薫堂代表) |
作品名: 紅貫入白香皿
作品名: 香⿁灯皿
作品名: ハレとケ
作品名: オーヴァル
作品名:CHILL TENT
作品名:香実
作品名:と香の間
作品名:NOROSHI
作品名:桜雲
全体総評
小仲 | 全体的には今回第5回目ということで、コロナの時の応募点数が結構多かったですが、今回は応募が89点ということでした。全体の印象といいますかそういったことについてから伺っていこうと思います。中原さんいかがですか? |
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中原 | かなり作品としてレベルが年々あがってきているなと僕は思いました。 すぐにパッケージして販売できそうなものが多かったと感じましたし、手仕事とまたそのプロダクト的な部分で、今年はプロダクト的な印象が強いように思いました。 大きい作品というより、コンパクトに場所を取らずという感じのものが多く見られました。色も派手さというものではなく、空間になじむような青色というか、クールな色だったり淡い色だったりというものが多いなという印象です。 |
小仲 | 確かに前回、結構立体感とか大振りなものがあったりしていましたが、今回は違いましたね。 |
山田 | 今回は最優秀賞がなく、優秀賞が3点になったのもそういった理由でしょうか。 |
中原 | そうですね。皆さんのそのレベルが均衡していたように思いました。サイズ感もあったりすると思いますし、ある程度そのシンプルに複雑じゃなくて、販売のことを考えてくれて複雑で使いにくくなってしまうようなことはないような、そういった部分を経済的に考えていたものも多かったと思うので、そういう意味では最優秀賞がなく、優秀賞が3つというのはうなずけるなと思います。 |
小仲 | 確かに手の込んだものをやればやるほど最優秀賞に近くなるようですが、なかなか再現性が難しいということで、結果としてそういうことですね。島田さんいかがですか? |
島田 | はい、実用に迫ったもの、実際の空間の中で使えそうなものがすごく増えてきていて、手に取って審査させてもらった時も軽やかな感じで、おうちの中でそれぞれ自分の部屋とかに持って行っても使えるようなそういうモバイル性の高いものが増えているなと気がします。実際、芸術性の高いものというよりも実用性に寄り添っているので、新しい今年なりのアイデアを盛り込んだものも増えているかなという気がしますね。ビジュアル的に見て楽しんだそんな審査会議だったと思います。 |
小仲 | ありがとうございます。確かにプロジェクト要素というか、そういったものが強い感じはありますね。山田さんはどうですか? |
山田 | 実用性というか、すぐに販売できそうな、そういったものが増えてきた感じです。今回はそういったものが非常に多かった気がしますね。 |
島田 | そういった意味でも最優秀賞を選ぶのが難しかったですね。 |
中原 | そうですね。 |
小仲 | その中でみるとやはり優秀賞3点が良かったです。中原さんは心に残ったものはありましたか、どうでしょうか? |
中原 | そうですね。優秀賞に選んだ「 |
山田 | そうですね、一捻りされていますね。陶器「 |
中原 | アイデア云々もありますが、佇まいというのがあるのがいいなと。 |
小仲 | その「香鬼灯」はプロダクト感の強い作品の中で芸術性のあるといいますかそういったもので、光った感じがしましたね。 |
中原 | はい。 |
小仲 | 島田さんはいかがですか? |
島田 | 香皿として、使わなかった時の空間での置かれ方、設えをみるとそれぞれ優秀賞は置いておくだけでしっくりくるのが絶妙でした。コロナで香皿の方向性が違う方へ少し出てきたのかな。前回まではダイナミックそれでアート的でしたが、それぞれ見て楽しめるのが今回の優秀賞の特徴だと思います。 |
小仲 | 優秀賞のガラスの「ハレとケ」は青い色がきれいですが、その他の良さはいかがでしょうか? |
中原 | そうですね。球体、アボガドの種をくりぬいた形からイメージしたと書かれていましたが、その佇まいをご本人が気に入られてその佇まいをうまく出して、あとそれを台、お皿に置くというのがとても日本的だと。そこがとてもよかったです。 |
小仲 | 確かにアクセントになりますね。 |
島田 | 空間にあってすてきな佇まいの作品ですよね。 |
小仲 | ガラスは最終選考で5点、どれも拮抗して本当紙一重でしたね。 |
山田 | また、陶器賞「 そういったアイデアとかむしろ面白さは今回、全作品の中で1番かもしれないですね。 |
島田 | そうですね。新しいチャレンジとしてもね、機能というよりもビジュアル的でオブジェクトとして楽しめる、空間とお香で成立するような。 |
山田 | そうですね、香立が後ろに隠れているんですよね。お香を立てて、面白いですよね。 |
島田 | アイデアの面白さは、今年は非常にあったかなと思いますね。 |
中原 | そうですね。 |
小仲 | 振り返ってみると応募素材がガラスと金属が多くて今回の金属おいてはその傾向がありましたが、陶器の方も復活してきそうですね。陶器は同じような機能性の高いものが3、4点ありで最終的には1点しか機能性のある作品が選ばれなかったですが。個人的にはあの作品がいいかなと思っています。 |
中原 | 先程も話していましたが、お香の残り方みたいなことを、前よりもどんどん意識していらっしゃるなと。皆さんお香を使われていて、最後まできれいに使い切れるようにとか、残った灰のことを考えているものも増えていますね。 |
山田 | はい。落ちた灰のことを皆さん考えられて。 |
島田 | 掃除をする時に、毎回灰を捨てられるとか、何回か使って灰を捨てたり掃除したりすることとか。僕もお香を使っていますが、使ったイメージの中で使い勝手と機能がいいのかどうかっていうのも審査の一つです。 |
小仲 | そうですね、5回目になって最初どちらかというと見た目とか、インパクトかんでだったのが、だんだん5回を重ねることによってそういう使用感というか、使い勝手みたいなところを考慮されていて、実際に使い勝手は重要な要素だったりするので、今後一つ参考にしてポイントです。 個別の部門賞ですが、中原賞「オーヴァル」、意外にもシンプルなものを選ばれて、中原さんの見方っていうのがあるのではと興味深いです。 |
中原 | 「オーヴァル」の形状は非常に撫でていたくなるようなシンプルな形状であるということと、真鍮素材で、1920年代とか30年代のオーストラリアとかのウイーン工房のようなアールデコの形状を彷彿とさせるモダンさがあって、ちゃんとした機能がある。ペーパーナイフのような滑らかな、そのなんとも言えない形っていうかなんか非常に愛着があって自分でも仕入れてみたいなというのもありました。 |
小仲 | 今回、結構真鍮の素材のものが多くありましたが、実際真鍮の価格も高いですよね。 そういった意味でも最終的にプロダクト化が実用化を考えると、そこも重要なポイントかもしれませんね。 |
中原 | そうですね。他にも重厚な作品も多くありましたね。こちらは比較的に薄くて高級感があるので、僕ならそれなりの値段でも買うかな。 |
小仲 | 選ばれる要素として、ご自分で販売されるとか、ご自分で買いたくなるとか、そういった目線っていうのは結構大きいということですね。 |
中原 | はい。 |
小仲 | 早めに選ばれていらっしゃいました。島田さんが選ばれた作品「CHILL TENT」は同じ金属ですけど、素材はスチールですかね。 |
島田 | 選んだ理由はタイトルが「CHILL TENT」という名前で、作られた方の思いがすごく入っている。白いテントの中にお香を立てる。そして手に持って軽やかに感じたし、おうちの中でも場所を選ばずに置いてもらえそうで。はじめて、香皿を買う方もこういったちょっとチャレンジ的なデザイン、アイデアとネーミングとそして、機能性がすごくあり、相まってきて、コロナ禍が終わり、新しく皆外に出て、そういった軽やかさも感じたので、選びました。 |
小仲 | 煙が上に上がってどんなふうに動くのかとか。 |
島田 | そうですね、煙の立ち方も他にないプロダクツの面白さを表現ができるようなものだと思います。それを実現している作品だなと思います。 |
小仲 | 次に香十賞「 |
山田 | はい、香十賞「 |
小仲 | 香十らしい作品だったかもしれないですね。あと、陶器賞「 |
山田 | そうですね。どうしても金属の作品は恰好がよくて脚光を浴びますが、陶器の方が香十賞として、選びやすい作品が多いですね。今回選ばれなかった作品もすてきなものが多かったと思います。 |
小仲 | 金属っていう男性的だけど、ガラスとか陶器の方がエレガントな感じですよね。 |
山田 | 陶器の作品の作者がお若かったり、金属の方がしっかりとされている方が多かったり。金属はしっかりした感じですが、販売するとなると若者ウケする傾向がある気がします。 |
小仲 | 今回金属は他のガラスとかあるいは陶器と比べて点数も多かったので、そういった意味では部門賞というのも大変な競争だったと思います。 |
中原 | ガラスは若干応募が少なく寂しい傾向にありましたが、金属は色々応用が利き安い素材で、発想もいろいろ出やすい素材というのがやっぱり特徴として、出てきたという風に思います。その中でプロダクト的なものが増えつつあります。色目もある程度金属の持っている良さ多いなみたいな特徴が出てきたなと思います。 |
島田 | そういう意味では他と比べて差別性っていうところで光ったものがあったかなっていうそうですね。 |
中原 | そうですね。 |
小仲 | その他の部門賞はいかがでしょうか。 |
島田 | ガラス部門賞「 |
山田 | そうですね、色合いも上品で日本らしいデザインです。 |
島田 | 金属賞は「NOROSHI」というタイトルをつけられていますけど、この金属の筒を通って、お香の煙が緩やかに広がる様子も新しい発想、アイデアでいいですね。 |
小仲 | 持ち運びも考えられている感じで、お香を使うということを身近に感じていただけそうです。 さて今回をふまえて、次回に向けてというところですけれども、先ほど実用、実際に使い勝手みたいなところも重要だと思うのではないかという話もありますし、あとプロダクト化するにあたっての価格帯も先程、話が出ていましたけれども、そうすると全体的には何て言うのですかね、ちょっと華やかさが失われる可能性があると思います。 |
中原 | そうですね、価格帯とかももちろん考慮している方が増え、まぁただコンパクトにまとまりすぎていて技術の方に偏ってしまうのではなく、全体的にバランスのとれたものがでてきてくれると、より楽しみですね。逆に言ったらきれいにまとまりすぎていても面白くないですよね。何とも言えないですけど。 |
小仲 | そうですね。 |
中原 | クールさとか佇まいの良さ、インテリアの場所で多趣味なものが出てくると思うといいですね。 |
小仲 | そういったところで最優秀賞に近づいてくるのですね。島田さんはいかがですか。 |
島田 | 香りをもっといろんなシチュエーションシーン、色々な空間で楽しむ。あとは自分のためだけでなく、誰かへのプレゼントとか。使ってどうだろうかってイメージできる。誕生日プレゼントにお香と一緒にあげたくなる気がします。新しい方向で楽しんでもらえるきっかけづくりになるかなという気がします。 |
山田 | 先程、桜のお話をしていましたけど、桜の商材は日本の場合だと春先、春の桜のシーズンに売れますが、コロナ禍が終わって、欧米の方のご来店が増えて、1年中満遍なく売れます。今回一次選考から色々な作品を見て、海外のお客さまが本当にお土産として、日本の良さを海外の方にわかっていただくみたいな、そういったものも念頭に置いてみたいです。 今後すごく変わってくるのではないですかね。日本人が思う日本らしいじゃなくて海外の方たちが見た日本というものも取り入れてと、期待しちゃいますね。 |
小仲 | 現場のそういう話では、色々なお客様が増えてきて、そういった方々に刺さるような日本を伝えられれば良いっていう。 |
山田 | 日本人以上に反応があるのかと思います。 |
小仲 | 皆様の色々な切り口からお話が伺えてよかったです。本日は誠にありがとうございました。 |
香皿コンテスト授賞式
下記のスケジュールで作品を展示予定です。