香十「香皿」デザインコンテスト2021

結果発表

応募作品91作品の中から、一次選考にて34作品を選出、
提出頂いた31作品の中より下記の日時で最終選考を行いました。

2022年 4月15日 13:00~15:30
香十香皿デザインコテスト選考会を銀座本社6階会議室にて行いました。
選考委員 中原慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表、株式会社コンランショップ・ジャパン 代表、インテリア&プロダクトデザイナー)
島田昭彦(京都伝統文化プロデューサー、京都芸術大学講師)
小仲正克(株式会社日本香堂ホールディングス代表)
山田昌彦(株式会社香十天薫堂代表)

【最優秀賞】I.M.A. 今井勝英 様

作品名:「うつろい」

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作品詳細
うつろいはスチール製の香皿です。
香りと煙りの流れを楽しむ「お香」
そこには小さいがしっかりとした熱が存在する。
「うつろい」はその熱を背面の鉄板に施した温度を感知し色を変化させる塗料により可視化する。
時と共にうつろうその風景は香が燃え尽きるまでの限られた時間を香りとともに、より大切な記憶へと昇華させる。
なにげなく過ぎていく日常が特別であることを知るデバイスとしての提案です。
小仲 迫力があって背景というか壁面というかがあるというのはきれいさがありますね。
山田 火種の熱を利用した作品はじめてじゃないでしょうか。
香十 サーモクロミック塗装というものをうまく使っていますね。煙がひとつのアートになっています。温度によって見え方がかわっていくのが面白いです。
島田 近未来的な作品ですね。こういったアプローチから入ってきてくれると嬉しいです。この作品でお香をつかって生活のONとOFFの切り替えができそうです。平面の香皿ではなく立体的な香皿は新しい感じです。
中原 審査員の票が一番多かったですね。最優秀賞にふさわしいと思います。
I.M.A. 今井勝英様 受賞の気持ち
この度はすばらしい賞を頂き誠にありがとうございます。
日常で、意識されず見過ごされているものに気付くこと、そしてその見過ごされているものによって新しい価値がうまれたらより素敵な「もの」「こと」になるのでは。そんな想いで作品を作らせていただきました。
まだまだ検討の余地のある状態ですが「うつろい」が香皿の可能性のひとつを提案できていれば幸いです。
製作にともない金属の加工・塗装においてご協力いただいた方々に心より感謝申し上げます。

【優秀賞】迫健太郎 様・迫穂奈美 様

作品名: onput(オンプット)

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作品詳細
お香を立てると、まるで音符のように見える香皿です。好きな音楽をかけるように、好きな香りであなたの部屋を満たしてほしい。
自宅で過ごす時間が増えた、特に若い世代の人々にお香をカジュアルに取り入れてもらうためのプロダクトです。
島田 落ちた灰の後始末を最近使う時に気にしていますが、灰を拾える構造、工夫がしていることが大切でそのあたりの完成度が高いのがいいです。プレゼントとしても差し上げたらうれしいのではないでしょうか。
中原 僕はこの作品が1番気に入りました。造形の力、素材の組み合わせ、配色のよさを感じます。素材が安っぽくないのもいいですね。音楽をかけるように香りを楽しんでという感じがしてよいと思いました。
迫健太郎様・迫穂奈美様 受賞の気持ち
この度は優秀賞への選出、誠にありがとうございます。
凛と立つお香の姿をさらに引き立て、
香皿の形と一体となって視覚的に楽しめる作品を目指してデザインしました。
今回の受賞を励みに、今後も夫婦で創作活動を続けて参ります♩

【中原賞】中野雅子 様

作品名: Moss

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作品詳細
苔玉をイメージしたデザインです。
日々の暮らしの中でお香を焚き、ゆっくりと落ち着き、ゆったりとした気持ちで溶けていくイメージで作成いたしました。
中原 ガラスの形状自体に、パッと見た瞬間感じいいなと思いました。技術的なことは詳しくわからないけど、型に入れて中でガラスを溶かして藻のような状態のものが残るようにと理解されてこの形状にしたと思いますが、すごく透けて見える中の模様の感じと形状の柔らかさがすごい相まっていい造形になっているなと。置いていても情景になっていて、北欧のデザイナーのガラスのような深みもあるし、形状としてのかわいらしさがあって自分も欲しいなと思ったし、使ってみたいなと思いました。
中野雅子様 受賞の気持ち
この度は中原賞を賜り、大変光栄に存じます。そして日頃から制作の応援をしてくださる方々に、この場を借りて感謝申し上げます。
穏やかな香り、光、空間、時…などを意識し、その制作は楽しく勉強になりました。
今回、評価頂けたことが、今後の制作の励みになります。
誠にありがとうございました。

【島田賞】榊原義弥 様

作品名:KOBO-香棒-

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作品詳細
野に街に香りを持ち出す。一服の香りを纏う場を探し求め一片の木片に目を留め、拾い上げるそんな所作が日常から離れた新たな癒しの時を生み出します。
世代ごとにお香との距離も様々・・・従来の静謐な「静」のお香も良し。部屋から飛び出し、首から掛けて野や街でお香を焚く・・・日常と異なる場と香りは、世代を超えた人に新たな気付きと癒しを与えてくれます。
島田 タイトルが KOBO って香りの棒となっていますが、やはり持ち運び、香りを色々なシーンで楽しみたいそんな時に、例えば出張に行ったり、またはこれキャンプなどのアウトドアに行ったときにちょっと気分を変えるために楽しみたい、色々なシーンで使える、そんな香皿のデザインコンテストですがこういった新しい発想でモノづくりを提案されてきたのはすごく評価に値しますし、これが多くの人に楽しんでもらえる香りのプロダクトにつながっていけばいいなと思っています。アクティブな感じで、木の棒を使ったりしてオブジェになるところもよいですね。
榊原義弥様 受賞の気持ち
香りを外に持ち出し、心に触れた場と花木と共に一服の香りを楽しむ・・・
変化した日常の新たな「時」の過ごし方を想い、デザインしました。束の間、日常から離れ、たおやかな時を過ごしてもらえればと思います。
この度は選考頂き、ありがとうございました。

【香十賞】幸田大和 様

作品名:風の小道

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作品詳細
どこまでも続く小道に香りが漂い、記憶の散歩へ出かけるようなイメージで制作しました。
お香を斜めに挿すタイプで、灰が散らばらずに小道に落ちる角度にしています。柔らかな曲線と一本の木が特徴です。
香十 灰がこぼれない R を工夫している感じがとても惹かれました。
山田 素材感もよいですね。物語があります。
島田 それと機能性がよい。買いたくなる。アートっぽい感じもよいです。
中原 やわらかい作品ですね。エレガンス、雅という感じが香十らしいと思います。
香十 何度か応募してくださっていたので受賞に決まって嬉しいです。
幸田大和様 受賞の気持ち
この度は「香十賞」をいただき、誠にありがとうございます。陶器の優しい風合いと滑らかな曲線を大切に作りました。
今後の制作の励みとし、より良いものを制作していきたいと思っております。本当にありがとうございました。

【陶器部門賞】関口祐介 様

作品名:Incense Mug

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作品詳細
「おうち時間」が増えた昨今、その日の気分や家族の居場所に合わせ、自分の作業スペースも変える。
そんな新しいライフスタイルに寄り添った香皿の提案です。コーヒーマグの形からヒントを得て、持ち運びしやすくモダンな住環境に溶け込むデザインを目指しました。仕事中に気分転換したい時、リラックスしたい時あたかもコーヒーを淹れて飲むような気軽さでお気に入りのお香を好きな空間で楽しめるようにしました。
コメント 現代アート的な感じ。
物珍しさはないですが、インテリアとしてなじみやすい。
パッケージも作られてプレゼンテーションが上手。
少し雑貨の要素がある感じがしますか、現代にそった感じがよい。
ライフスタイルに寄り添った提案が決め手となりました。
関口祐介様 受賞の気持ち
この度はこのような素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。
慌ただしい毎日の合間に、お香でホッと一息つけるような優しい雰囲気を目指し、りんごのような、ころっとした丸い曲面でデザインしました。
この作品の制作にあたって、ご協力いただいた方々にも感謝を申し上げます。
今回素敵な賞をいただけたことを励みとし、今後精進していきたいと思います。

【金属部門賞】奥居功周 様

作品名:WAVE

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作品詳細
波型の板を少し斜めにトリミングすることで、線香が皿の中に納まり、また波型の溝が落ちゆく灰を留める。その様な香皿をデザインしました。
一見モダンな造形に見えますが、扇子の和紙の折りから引用しています。
コメント 建築的な素材感と雰囲気がおもしろい。
香り入門の方向けにもよいですね。使いやすそうです。
ありそうでなかった素材感。
プロダクトとして商品化しやすい印象を受けました。
奥居功周様 受賞の気持ち
今回、受賞の連絡をいただき大変嬉しく思っております。
私自身が普段からお香を嗜む事もあり、デザイン×お香 でものづくりができた事、そして賞まで頂けた事は今後の活動の励みになります。

【ガラス部門賞】塚原梢 様

作品名:鏡花水月

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作品詳細
夜の静かな水面に月明かりに照らされた花が映り込んでいる様子をイメージしました。
ガラスに七宝で使用する銀線を置き焼成する技法で制作しています。ガラスの透明感や鮮やかな色彩、銀線の繊細な線のそれぞれの素材の良いところをあわせることができるので、そこに魅力を感じています。
コメント 技術もしっかりしていて、線の細かさと美しさが引き立つ。
七宝で使用する銀線を使って焼き付けているというのが素晴らしい。
ガラスは一発勝負なので、すごい。
香立にも柄が入っていて、そこまで気にかけているところもよかったです。
塚原梢様 受賞の気持ち
この度は、素敵な賞をいただき、ありがとうございます。
今回の制作では色々な発見があり、引き続き香皿を作りたいと思います。
賞をいただけたことで、とても励みになりました。今後も精進してより良い作品が作れるように頑張ります。

全体総評

中原 コンテスト 4 回目ということで、技術的にも素材の特性を理解して形にするところまでをきちっと計画できているなと、年々精度が上がってきてるな、というのがひとつの印象です。その中でも僕はこの優秀賞「onput」 が好きなんですけど、見た目の楽しさと「お香」があるということを前提にされた形状にしている面白さがありますね。それ以外でも、技術的にガラス部門賞「鏡花水月」の作品もそうですけど技術をちゃんと上手く香皿に使いたいという気持ちが伝わってきます。全体として、分野はガラスと、金属と陶器とありますが、それぞれの素材の特性を生かして、わかって応募する人が多いなと、レベルの高さと、製品として販売したときの感じも伝わってくる作品が今回も多かったと思います。よりプロダクト、製品に近いレベルの方が多かったと思いました。
島田 全体として新しい素材を使って新しいライフスタイルの中に入っていけるような提案のものが増えたなと感じました。特にお香から立ち上がる煙をどのように見せるかなど、そういった香りに加えてビジュアル的なお香のよさを引き出せるようなそんなデザインのものが多かったように思います。また更に香りを楽しむシチュエーション、シーンの提案としてモバイル性の高い提案が出てきたり、既存のお皿という発想から発展して展開して立体的に背面や壁面のような見せ方をしながらそこに煙りの様子を使用する素材の中でミックスして楽しめるような新しい感じがします。コンテストは 4 回目ですが、これからに向けて大きな転換点となる回であると感じました。
島田 最優秀賞は新しい表現、見せ方、優秀賞は音符、onput というんですね、音符とアウトプットしてということですか、タイトルとしての意味、完成された作品の中のシンプルでそれでいて香りを楽しむ、それでいてシンプル、音楽とアートの要素も含んでいますね。特筆すべきは香十賞の香りをエレガントに楽しむためのツールとして提案されているのではないかと思います。
小仲 今回第 4 回目ですけれども、丁度コロナ禍を 2 年くらい挟んでの第 4 回目のコンテストというところでしたが、全体的なモノづくりといいますか、アートといいますか、全体の動向などいろいろとあると思いますが中原さんなどはそういったところを踏まえて、コロナ禍を経て作品への影響はご覧になって感じられたことはありますか、また今後こうなっていくなどの知見を加えていかがでしょうか。
中原 やはり家にいる時間が増えたということもあると思います。作家さん本人も前よりも工房の中でやることってかわってきたのかなと思います。前よりも作る上で技術的なことだけでなくて情景というか自分のいる場所とか使っている情景を考えて作る人が増えたんじゃないかなと思います。多分みんなそうなんじゃないかと、それが表れている感じがします。
小仲 モノづくり 地域やバックグランドだったりの今後の表現や作り方というか、中原さん的には今後興味あることとか、どういうことが大切だとお考えですか。
中原 昔はもう少し賞を取りたいとかで奇をてらったものとかしたと思いますが、楽しくつくっていらっしゃって、自分が使うことを考えていたり、本当にプロダクトとしてすばらしいというのもあるし、工芸品としても純粋にすばらしいものがではじめているなと。そういう売れたいとか、欲にまみれたものとかではなくて(笑)つくる喜びというか、つくる喜びと技術を持った人がちゃんといい風に消化しているなと、そういうことが今後も大事じゃないでしょうか。そういう方が純粋に選んでいて楽しいです。
小仲 奇をてらったというよりも自然体でというところですね。
中原 そうですね。健康的な良さもありますね。
小仲 島田さんは、最近地域の活性化で各地へ行かれていますが、地域の技術だとかいいものがあると思いますが、全体の流れで今後こういったモノづくりに対するお考えとかありますか?
島田 そうですね。香皿コンテストにおいては、よりライフスタイルに寄った、作り手の人が自分でどう楽しむのか、自然体になっている気がします。だから故に部屋の中だけでなく、外で使えるものとか。部屋の中でも、部屋のシーンに応じて使える、または自分が使いたいなという想いが、作り手の人のメッセージが込められていて、ひとつは作る前の前段階で研究されている人が増えている傾向があるなと思います。このガラス部門賞の方は金沢から応募されてきて、そういった新規のバックボーン、背景にしてだけどそこに技術だけでなくもう少し日常生活に寄り添ったもの、これはもうコロナ禍 2 年過ぎてこれからもっとより、等身大というか生きるそのものに近いモノづくりになってくると思います。今回それが、特に表れている感じです。
小仲 コーヒーカップのような陶器部門賞「Incense Mug」とか、香十賞「風の小道」とか自分のライフスタイルにいいなというものを形にした感じがありますね。
島田 受賞には入らなかったですが、金属ですてきなものがありましたね。
中原 鉄の素材感、引き算の美しさというか、畳の上に置いたら素敵な作品があったのでとても悩みました。
プロダクト化するということで今回は選考させてもらいました。
山田 受賞は逃した作品に、商品化したいものが多かったです。
小仲 とてもレベルの高い作品が多く選考にも時間がかかりましたが今年はすばらしい 8 作品を選考できたと思います。表彰式でもよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中誠にありがとうございました。

香皿コンテスト授賞式

【表彰式】
日時:2022年6月9日
ZOOMオンラインにて開催。
録画をyoutubeにて掲載いたしました。
ぜひご覧ください。
受賞作品展示予定スケジュール

下記のスケジュールで作品を展示予定です。

2022年 7月1日~9月30日
香十二寧坂店(京都府京都市東山区桝屋町349-8)
2022年 10月10日~11月30日
銀座本店(東京都中央区銀座4-9-1)
一部受賞作品を2022年秋頃(新たに製造したもの)販売予定です。
(受賞作品本体は販売いたしません)