選考委員 | 中原慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表、株式会社コンランショップ・ジャパン 代表、インテリア&プロダクトデザイナー) |
---|---|
島田昭彦(京都伝統文化プロデューサー、京都芸術大学講師) | |
小仲正克(株式会社日本香堂ホールディングス代表) | |
山田昌彦(株式会社香十天薫堂代表) |
作品名:「うつろい」
小仲 | 迫力があって背景というか壁面というかがあるというのはきれいさがありますね。 |
---|---|
山田 | 火種の熱を利用した作品はじめてじゃないでしょうか。 |
香十 | サーモクロミック塗装というものをうまく使っていますね。煙がひとつのアートになっています。温度によって見え方がかわっていくのが面白いです。 |
島田 | 近未来的な作品ですね。こういったアプローチから入ってきてくれると嬉しいです。この作品でお香をつかって生活のONとOFFの切り替えができそうです。平面の香皿ではなく立体的な香皿は新しい感じです。 |
中原 | 審査員の票が一番多かったですね。最優秀賞にふさわしいと思います。 |
作品名: onput(オンプット)
島田 | 落ちた灰の後始末を最近使う時に気にしていますが、灰を拾える構造、工夫がしていることが大切でそのあたりの完成度が高いのがいいです。プレゼントとしても差し上げたらうれしいのではないでしょうか。 |
---|---|
中原 | 僕はこの作品が1番気に入りました。造形の力、素材の組み合わせ、配色のよさを感じます。素材が安っぽくないのもいいですね。音楽をかけるように香りを楽しんでという感じがしてよいと思いました。 |
作品名: Moss
中原 | ガラスの形状自体に、パッと見た瞬間感じいいなと思いました。技術的なことは詳しくわからないけど、型に入れて中でガラスを溶かして藻のような状態のものが残るようにと理解されてこの形状にしたと思いますが、すごく透けて見える中の模様の感じと形状の柔らかさがすごい相まっていい造形になっているなと。置いていても情景になっていて、北欧のデザイナーのガラスのような深みもあるし、形状としてのかわいらしさがあって自分も欲しいなと思ったし、使ってみたいなと思いました。 |
---|
作品名:KOBO-香棒-
島田 | タイトルが KOBO って香りの棒となっていますが、やはり持ち運び、香りを色々なシーンで楽しみたいそんな時に、例えば出張に行ったり、またはこれキャンプなどのアウトドアに行ったときにちょっと気分を変えるために楽しみたい、色々なシーンで使える、そんな香皿のデザインコンテストですがこういった新しい発想でモノづくりを提案されてきたのはすごく評価に値しますし、これが多くの人に楽しんでもらえる香りのプロダクトにつながっていけばいいなと思っています。アクティブな感じで、木の棒を使ったりしてオブジェになるところもよいですね。 |
---|
作品名:風の小道
香十 | 灰がこぼれない R を工夫している感じがとても惹かれました。 |
---|---|
山田 | 素材感もよいですね。物語があります。 |
島田 | それと機能性がよい。買いたくなる。アートっぽい感じもよいです。 |
中原 | やわらかい作品ですね。エレガンス、雅という感じが香十らしいと思います。 |
香十 | 何度か応募してくださっていたので受賞に決まって嬉しいです。 |
作品名:Incense Mug
コメント | 現代アート的な感じ。 物珍しさはないですが、インテリアとしてなじみやすい。 パッケージも作られてプレゼンテーションが上手。 少し雑貨の要素がある感じがしますか、現代にそった感じがよい。 ライフスタイルに寄り添った提案が決め手となりました。 |
---|
作品名:WAVE
コメント | 建築的な素材感と雰囲気がおもしろい。 香り入門の方向けにもよいですね。使いやすそうです。 ありそうでなかった素材感。 プロダクトとして商品化しやすい印象を受けました。 |
---|
作品名:鏡花水月
コメント | 技術もしっかりしていて、線の細かさと美しさが引き立つ。 七宝で使用する銀線を使って焼き付けているというのが素晴らしい。 ガラスは一発勝負なので、すごい。 香立にも柄が入っていて、そこまで気にかけているところもよかったです。 |
---|
全体総評
中原 | コンテスト 4 回目ということで、技術的にも素材の特性を理解して形にするところまでをきちっと計画できているなと、年々精度が上がってきてるな、というのがひとつの印象です。その中でも僕はこの優秀賞「onput」 が好きなんですけど、見た目の楽しさと「お香」があるということを前提にされた形状にしている面白さがありますね。それ以外でも、技術的にガラス部門賞「鏡花水月」の作品もそうですけど技術をちゃんと上手く香皿に使いたいという気持ちが伝わってきます。全体として、分野はガラスと、金属と陶器とありますが、それぞれの素材の特性を生かして、わかって応募する人が多いなと、レベルの高さと、製品として販売したときの感じも伝わってくる作品が今回も多かったと思います。よりプロダクト、製品に近いレベルの方が多かったと思いました。 |
---|---|
島田 | 全体として新しい素材を使って新しいライフスタイルの中に入っていけるような提案のものが増えたなと感じました。特にお香から立ち上がる煙をどのように見せるかなど、そういった香りに加えてビジュアル的なお香のよさを引き出せるようなそんなデザインのものが多かったように思います。また更に香りを楽しむシチュエーション、シーンの提案としてモバイル性の高い提案が出てきたり、既存のお皿という発想から発展して展開して立体的に背面や壁面のような見せ方をしながらそこに煙りの様子を使用する素材の中でミックスして楽しめるような新しい感じがします。コンテストは 4 回目ですが、これからに向けて大きな転換点となる回であると感じました。 |
島田 | 最優秀賞は新しい表現、見せ方、優秀賞は音符、onput というんですね、音符とアウトプットしてということですか、タイトルとしての意味、完成された作品の中のシンプルでそれでいて香りを楽しむ、それでいてシンプル、音楽とアートの要素も含んでいますね。特筆すべきは香十賞の香りをエレガントに楽しむためのツールとして提案されているのではないかと思います。 |
小仲 | 今回第 4 回目ですけれども、丁度コロナ禍を 2 年くらい挟んでの第 4 回目のコンテストというところでしたが、全体的なモノづくりといいますか、アートといいますか、全体の動向などいろいろとあると思いますが中原さんなどはそういったところを踏まえて、コロナ禍を経て作品への影響はご覧になって感じられたことはありますか、また今後こうなっていくなどの知見を加えていかがでしょうか。 |
中原 | やはり家にいる時間が増えたということもあると思います。作家さん本人も前よりも工房の中でやることってかわってきたのかなと思います。前よりも作る上で技術的なことだけでなくて情景というか自分のいる場所とか使っている情景を考えて作る人が増えたんじゃないかなと思います。多分みんなそうなんじゃないかと、それが表れている感じがします。 |
小仲 | モノづくり 地域やバックグランドだったりの今後の表現や作り方というか、中原さん的には今後興味あることとか、どういうことが大切だとお考えですか。 |
中原 | 昔はもう少し賞を取りたいとかで奇をてらったものとかしたと思いますが、楽しくつくっていらっしゃって、自分が使うことを考えていたり、本当にプロダクトとしてすばらしいというのもあるし、工芸品としても純粋にすばらしいものがではじめているなと。そういう売れたいとか、欲にまみれたものとかではなくて(笑)つくる喜びというか、つくる喜びと技術を持った人がちゃんといい風に消化しているなと、そういうことが今後も大事じゃないでしょうか。そういう方が純粋に選んでいて楽しいです。 |
小仲 | 奇をてらったというよりも自然体でというところですね。 |
中原 | そうですね。健康的な良さもありますね。 |
小仲 | 島田さんは、最近地域の活性化で各地へ行かれていますが、地域の技術だとかいいものがあると思いますが、全体の流れで今後こういったモノづくりに対するお考えとかありますか? |
島田 | そうですね。香皿コンテストにおいては、よりライフスタイルに寄った、作り手の人が自分でどう楽しむのか、自然体になっている気がします。だから故に部屋の中だけでなく、外で使えるものとか。部屋の中でも、部屋のシーンに応じて使える、または自分が使いたいなという想いが、作り手の人のメッセージが込められていて、ひとつは作る前の前段階で研究されている人が増えている傾向があるなと思います。このガラス部門賞の方は金沢から応募されてきて、そういった新規のバックボーン、背景にしてだけどそこに技術だけでなくもう少し日常生活に寄り添ったもの、これはもうコロナ禍 2 年過ぎてこれからもっとより、等身大というか生きるそのものに近いモノづくりになってくると思います。今回それが、特に表れている感じです。 |
小仲 | コーヒーカップのような陶器部門賞「Incense Mug」とか、香十賞「風の小道」とか自分のライフスタイルにいいなというものを形にした感じがありますね。 |
島田 | 受賞には入らなかったですが、金属ですてきなものがありましたね。 |
中原 | 鉄の素材感、引き算の美しさというか、畳の上に置いたら素敵な作品があったのでとても悩みました。 プロダクト化するということで今回は選考させてもらいました。 |
山田 | 受賞は逃した作品に、商品化したいものが多かったです。 |
小仲 | とてもレベルの高い作品が多く選考にも時間がかかりましたが今年はすばらしい 8 作品を選考できたと思います。表彰式でもよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中誠にありがとうございました。 |
香皿コンテスト授賞式
下記のスケジュールで作品を展示予定です。